女性の薄毛治療薬を使い始めれば、すぐに髪が生えてきて、抜け毛もピタリと止まる。そんな風に期待している方も多いかもしれません。しかし、薬による治療には、効果が現れるまでの過程で、知っておかなければならない特有の現象や、副作用のリスクが伴います。これらを正しく理解しておくことが、不安なく治療を続けるための、そしてご自身の身を守るための「心の準備」となります。まず、特にミノキシジル外用薬を使い始めた方に、高い確率で起こるのが「初期脱毛」です。これは、薬を使い始めてから2週間から1ヶ月半頃に、一時的に抜け毛が増加する現象です。髪を生やすための薬を使っているのに、逆に抜け毛が増えるというのは、非常に不安になるでしょう。しかし、これは薬が効いている証拠、いわば「好転反応」なのです。ミノキシジルの作用によって、乱れていたヘアサイクルが正常化する過程で、休止期に入っていた古い髪の毛が、新しく生えてくる健康な髪に押し出されることで起こります。この期間は辛いですが、通常は1〜2ヶ月ほどで治まり、その後、新しい髪が生え始めます。ここで使用をやめてしまうと、せっかくの治療効果が得られなくなってしまうため、医師の指導のもと、ぐっとこらえて治療を続けることが重要です。次に、副作用のリスクです。ミノキシジル外用薬では、頭皮のかゆみ、かぶれ、赤みといった皮膚症状が最も多く報告されています。また、もともと血圧の薬であるため、ごく稀に動悸やめまい、むくみといった全身性の副作用が出ることもあります。内服薬であるスピロノラクトンでは、低血圧、頻尿、生理不順、高カリウム血症といった副作用のリスクがあります。これらの薬は、全て医師の処方・管理のもとで使用されるべきものであり、副作用が出た場合にすぐ相談できる体制が不可欠です。薬による治療は、効果という「ベネフィット」と、副作用という「リスク」を天秤にかけ、ベネフィットが上回ると判断された場合に選択されるべきものです。治療を始める前に、医師から十分な説明を受け、リスクを理解した上で、納得して治療に臨むことが何よりも大切です。