甲状腺疾患による薄毛の見分け方と診断

薄毛の原因が甲状腺疾患にあるのか、それともAGA(男性型脱毛症・女性型脱毛症)や円形脱毛症、あるいは他の要因によるものなのか、自分で正確に見分けることは非常に困難です。しかし、いくつかの特徴を知っておくことは、早期受診のきっかけになるかもしれません。甲状腺機能異常(低下症・亢進症)による脱毛は、多くの場合、頭部全体の髪が均等に薄くなる「びまん性脱毛」のパターンをとります。AGAのように生え際が後退したり、頭頂部だけが薄くなったりする典型的なパターンとは異なることが多いです。また、髪質の変化、例えばパサつき、ツヤのなさ、細毛化、切れ毛の増加などを伴うことも特徴的です。眉毛の外側3分の1が薄くなるのは、特に甲状腺機能低下症で比較的よく見られるサインとされています。最も重要な判断材料は、脱毛以外の全身症状の有無です。甲状腺機能低下症であれば、強い疲労感、冷え、むくみ、体重増加、便秘、気力低下など。甲状腺機能亢進症であれば、動悸、多汗、手の震え、体重減少、イライラ感、眼球突出など。これらの症状が脱毛と同時に見られる場合は、甲状腺疾患の可能性を強く疑うべきです。しかし、これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、個人差も大きいため、自己判断は禁物です。正確な診断のためには、必ず医療機関を受診する必要があります。まずはかかりつけ医や内科、あるいは脱毛を主訴とする場合は皮膚科に相談しましょう。必要であれば内分泌科を紹介されることもあります。診断は、問診(症状、既往歴、家族歴など)や視診に加え、血液検査によって甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)や自己抗体(橋本病やバセドウ病の場合)の値を測定することで行われます。早期に原因を特定し、適切な治療を開始することが、薄毛の改善、そして全身の健康回復への鍵となります。