「鉄剤を飲めばハゲが治る」という噂を耳にすることがありますが、これは半分本当で半分誤解が含まれています。正確に言えば、「鉄分不足が原因で起きている薄毛(休止期脱毛症やびまん性脱毛症など)であれば、鉄剤で体内の鉄分量を回復させることで、劇的に改善する可能性がある」というのが真実です。逆に言えば、遺伝的な要素が強い男性型脱毛症(AGA)や、円形脱毛症、あるいは自己免疫疾患などが原因の薄毛に対しては、いくら鉄剤を飲んでも直接的な発毛効果は期待できません。しかし、AGA治療を行っている場合でも、鉄分不足があると治療薬の効果が十分に発揮されないことがあるため、補助的な意味で鉄分補給が重要になることはあります。鉄剤による治療効果が現れるまでには時間が必要で、飲み始めてすぐに髪が生えてくるわけではありません。まず体内の貯蔵鉄(フェリチン)が増え、ヘモグロビンが安定し、全身の細胞に酸素が行き渡るようになるまで数ヶ月かかり、そこからヘアサイクルが正常化して新しい髪が育つまでさらに数ヶ月かかるため、最低でも半年から1年程度は継続する必要があります。また、鉄剤は胃腸への負担がかかりやすく、吐き気や便秘などの副作用が出る人もいるため、自己判断で市販薬を大量に飲むのは危険です。必ず医療機関で血液検査を受け、医師の診断のもとで適切な量を処方してもらうことが大切です。「鉄剤=魔法の発毛薬」ではありませんが、鉄分不足というボトルネックを解消することで、体が本来持っている「髪を生やす力」を取り戻すことができる強力なサポーターであることは間違いありません。原因を突き止め、正しいアプローチを行うことが、薄毛克服への最短ルートなのです。