三十代半ばの会社員Bさんは典型的なM字型の薄毛に長年悩まされていました。二十代後半から徐々に剃り込み部分が深くなり始め前髪を下ろしても風が吹くと割れてしまいおでこが露わになることに恐怖を感じていました。市販の育毛剤を何種類も試しましたが効果は感じられずコンプレックスは深まるばかりでした。AGA治療においてM字部分すなわち前頭部の生え際は血管が細く薬の成分が届きにくいため頭頂部に比べて改善が難しいとされている難所です。Bさんの症例はそんな難易度の高いM字ハゲに対して根気強い治療が功を奏した事例として非常に参考になります。クリニックでの初診時BさんのM字部分はかなり深く進行しており産毛もほとんど確認できないツルツルの状態に近い箇所もありました。医師からは毛根が完全に死滅している部分に関しては薬での再生は不可能かもしれないという厳しい現実も伝えられました。しかし毛根が萎縮してはいるもののまだ生き残っている部分に関しては改善の余地があるとの診断でした。治療方針としてより強力な発毛効果を狙うためにデュタステリドの内服と高濃度のミノキシジル外用薬さらに頭皮に直接成長因子を注入するメソセラピーの併用が選択されました。これはM字特有の血流不足を補い外側と内側の両面から集中的に攻める戦略です。治療開始から三ヶ月Bさんは毎日欠かさず内服薬を飲み朝晩二回外用薬を塗り続けました。しかし頭頂部の患者が効果を実感し始める時期になってもBさんのM字部分には目立った変化が見られませんでした。やはりM字は治らないのかと諦めかけましたが医師から生え際は時間がかかる場所だから最低一年は頑張ろうと励まされ治療を継続しました。変化の兆しが見えたのは六ヶ月を過ぎた頃でした。M字の奥の方から細い産毛が密集して生え始めたのです。それはまだ頼りない毛でしたがマイクロスコープで見ると確かに毛数が増えていることが確認できました。そこからの進展はゆっくりでしたが着実なものでした。治療開始から十ヶ月後産毛は徐々に太くなりM字の鋭角だったラインが緩やかなカーブを描くようになってきました。以前は肌色が見えていた部分が黒く埋まっていく様子は毎日鏡を見るBさんにとって大きな喜びでした。そして一年半が経過した時点でBさんのM字部分は劇的な改善を遂げました。完全に元のラインまで戻ったわけではありませんが前髪を上げても不自然ではないレベルまで回復し好きな髪型を楽しめるようになりました。死滅したと思われていた毛根の一部が実は休止期にあっただけで強力な治療によって覚醒したのです。Bさんの症例はM字型AGAに対する治療の難しさと可能性の両方を示しています。頭頂部のように早期に劇的な変化が起きにくい部位であっても適切な薬剤選択と根気強い継続そして必要に応じたプラスアルファの治療を組み合わせることで満足のいく結果を得ることは可能です。M字ハゲは治らないという定説を覆し自分に合った治療法を見つけることでコンプレックスを解消できたBさんの笑顔は多くのM字に悩む男性へのエールとなるでしょう。
M字ハゲに悩む三十代男性のAGA治療ビフォーアフター